近年、長引く不況や、貸金業法の改正とそれに伴う過払い金請求など、サラ金業界にとっては厳しい状況が続いています。多数の顧客を抱え、安定した経営が可能な大手でさえ大きなグループ企業の一員になったりと、生き残りに必死な状況です。
ましてや中小規模のサラ金は、廃業する業者や経営統合する業者なども相次ぎました。いつの間にかなくなっていたり、営業を続けているとしても統合などで名前が何度も変わったりするサラ金業者もあって、ややこしいことになっています。
「アイク」というサラ金も、そのような業者の一部です。アイクがどのような変遷をたどって、今どうなっているのか調べてみました。
サラ金業者の「アイク」という名前に聞き覚えのある方も、いらっしゃるでしょうか。実はそのアイクは、今はもう存在しないサラ金業者となっています。アイクが営業していた頃はどんな業者だったのか、まずはそこからお話を始めましょう。
アイクが設立されたのは、ずいぶん昔の1979年のこと。ここをお読みの方々の中には、「その頃は、まだ生まれてない!」という方も多いかもしれません。そんなアイクのルーツは、実はアメリカにあるんです。
アメリカの自動車会社として有名な「フォード」の金融子会社である「アソシエーツ・ファースト・キャピタル (Associates First Capital Corp; AFCC) 」の、さらなる子会社「AICアソシエーツ・カナダ・ホールディングス (AIC Associates Canada Holdings Inc.) 」の日本法人として設立されたのです。
つまりアイクは、フォードの孫会社であり、アメリカやカナダ資本が入っている消費者金融だったのですね。
ちなみに、1979年に日本法人としてできた時点での社名は、「日本アソシエイツ・ファイナンシャル・サービス」というものでした。「アイク」という名前は、正式には「アイク株式会社」といい、1986年に社名変更された際に初めて付けられたものでした。
1970年代後半、アメリカ系の消費者金融が相次いで日本に進出していました。先にもお伝えしたように、アイクの日本進出は1979年と、米系同業者に比べるとやや遅いものでした。
しかし、先陣を切って日本に上陸したアメリカ系の消費者金融は、アメリカのやり方と日本でのやり方の違いに戸惑います。アメリカ流のやり方が日本人には思うように受け入れられず、撤退する米系サラ金が続出しました。
さらにその後1993年に、クレジットカードの国際ブランドである「MasterCard International」の認可を得て、「アイクカードサービス」というグループ会社を設立し、クレジットカード事業も始めます。
このように、クレジットカードも発行している消費者金融として順調に営業を続けていたアイクですが、2000年にアイクの親会社であるアソシエーツ・ファースト・キャピタルが、フォードからCiti Bankで有名なシティグループに売却されます。
それを機に、アイクもシティグループの一員となったのです。
そのシティグループには、以下の3つの消費者金融が存在していました。
2003年に、これら3社がディックファイナンスを存続会社として合併することとなり、「CFJ合同会社」が誕生します。「CFJ」は「Citi Finance Japan」の頭文字で、シティグループ傘下であることは変わりありません。
とはいえ、アイクという名前は社名からは外れましたが、消費者金融ブランドとして残ることになります。
お話してきたように、アイクの誕生からここまでの流れだけでも、いろんなことがありました。ちょっと頭が混乱している方もいらっしゃるかもしれません。企業の吸収合併や買収は複雑なものですし、ましてや消費者金融系のそれはさらに大変ですから、混乱するのもやむを得ません。
軽くおさらいしながら、アイクがどうなっていくのか、お話を続けます。
フォードの孫会社として、日本で消費者金融業を始めたアイクでしたが、親会社ごとシティグループに買収されます。さらに、アイクを含む、同じシティグループ内の消費者金融3社が合併し、CFJ合同会社が誕生します。
社名としてはなくなったものの、CFJの展開する消費者金融ブランド名として残ったアイクですが、ついに2006年、その名前が消えることになります。
CFJのサービスや事業拡大のため、アイクと同様残っていたブランドである「ディック」として、消費者金融事業が一本化されることになったのです。CFJ傘下であった、もうひとつのブランド「ユニマットレディス」も、同時にディックにまとめられました。
こうして、1979年の設立から30年弱の歴史を刻んできたアイクの名が、サラ金業界から消えることとなったのです。
「アイク」と「ディック」(と「ユニマットレディス」)が合併して、新たなディックができたわけですが、ディックは元々アイクと同じ系列だったわけではありません。
そもそもディックは、1974年にダイエーグループ傘下に入った消費者金融会社でした。
アイクが米系だったのに対し、ディックは日本で誕生した貸金業者だったのです。さらに、アイクが東京を本拠地にしたのに対し、ディックは大阪を拠点に営業をしていました。
もちろん、この頃はまったくの別会社です。そんなアイクとディックが出会ったのは、1998年のこと。ダイエーグループが経営不振となったニュースを覚えている方も、いらっしゃるかもしれません。そのダイエーグループは経営再建のため、アソシエーツ・ファースト・キャピタルへ株式を売却されました。
その後、CFJ合同会社に統一されたのは、前述のとおりです。
なかなか複雑でややこしい流れですが、ともにCFJ合同会社のブランドの一員だったアイクとディックが「ディック」に統一されて、業務拡大を図ったところまでお話しました。では、そのディックは現在、どのような状況になっているのでしょうか?
先にも触れましたが、紆余曲折を経てディックが現在の形になったのは、2006年です。
当時は、アイクがディックにまとめられて大きく生まれ変わることを宣伝するテレビCMやラジオCMも流され、インターネットやモバイルを使ったサービスにも力を入れたりと、新しいディックを盛り上げていこうという動きが盛んに見られました。
しかし、時代の流れや親会社であるシティクループの経営悪化のあおりを受け、翌2007年にはもう店舗の削減などといった業務縮小を余儀なくされます。そして、ついに2008年には貸金業務の大幅縮小と全店舗閉鎖に至ってしまいます。
アイクと統一されて生まれ変わったディックでしたが、わずか2年で事実上の廃業となってしまったのです。
この頃のサラ金業界が、いかに厳しかったかがうかがえる流れですね。
というわけでディックは、2010年から新規借り入れの申し込みは、受け付けていません。とはいえ、今でもCFJ合同会社やディックは、一応存続しています。サイトも閲覧できる状態ですが、新規の申し込みやローン商品に関する情報は掲載されていません。
しかしながら、かつてのアイクやディックで借入していた方は、返済はしなければなりません。
現在のディックは、事実上貸金業者としての経営はしておらず、返済受付のみ行っているという状態です。
返済ができる提携ATMは、以下の通りです。
借入残高がある方は、これらのATMから返済していってくださいね。
お伝えしてきたように、元々アメリカ系のサラ金だったアイクは、最終的にディックにまとめられました。しかし、そのディックも経営の悪化によって現在は貸金業務を行っていません。
とはいえ、会社としては存続していますし、返済受付は行っています。もしも旧アイクやディックから借り入れてまだ完済していない方は、忘れずに提携ATMから返済しましょう。
CFJ合同会社のサイトを見てみると、事業見直しのため新規受け付けを停止しているということが書かれています。ということは、もしかしたら、今後また貸し付けが復活するかもしれません。首を長くして待つのもまた一興ですね。
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